小学生の夏休み、楽しみな一方で自由研究どうしようかと悩んでいる親子もいるかと思います。
特に自由研究は自由だからこそ何をやったらいいのか子供も迷います。
だからと言って親がやってしまっては意味がないし、でも放っておいたら何もしないまま夏休みが終わりそうだし。
保護者の立場の人は、自由研究に対してどう向き合っていけばいいのでしょうか?
長く教育現場にいた方に話を伺った際に、自由研究と親御さんのかかわり方について聞いてみました。
自由研究で小学生は手伝うべきなの?
小学生の自由研究は、正直なところ親が手伝えば手伝うほどそりゃ力作ができるのは当たり前です。
そんな子の自由研究が学年で選ばれたり賞を取ったりしているのを見たら、「なんだ親の宿題じゃないか」と憤慨するのはもっともな話。
ただ、逆に完璧なる放任主義で何をやったらいいのかサッパリわからない子の作品は、少し保護者も相手してあげればいいのに・・・と複雑な気持ちになったりもします。
では小学生の場合には夏休みの自由研究を親がサポートしてあげる必要というのはあるのでしょうか?
これについては、親が関与していく必要がある部分もあるという風に考えられます。
確かに、自由研究のテーマ、やり方、まとめ、書くところすべてやってしまったのでは意味がありません。
その子の書くところが名前だけでは全くダメなのです。
しかし自分が小学生のころを思い出してみてください。
夏休み前の7月に担任の先生から「夏休みには自由研究をやってきてください」と漠然とした宿題を出されただけではなかったでしょうか?
自由研究計画書などを書かされる場合もありますが、基本的には自由。
っていうか研究の仕方を普通の授業では習ったことなどないのに、突然夏休みになったら研究しろなんてひどい話じゃありません?
「研究って言ったって小学生なんだからそんな大層なことじゃないだろう・・・」と思われるかもしれません。
しかし、実はうまく自由研究に関わっている親御さんは研究の基礎というものを知っているから自分の子供をうまくサポートできているのです。
(もしかしたらご本人にそういう自覚はないかもしれません)
「え、研究の基礎ってなに?そんなのあるの?」と思われるかもしれませんが、実はあります。
例えばですが、将棋のルールを知らない人に将棋盤と駒を渡しても将棋はできませんよね?
自由研究と同様で、夏休みの読書感想文だって感想文の書き方を普通の授業で習っていなかったら、小学生は何を書いたらいいのかさっぱりわからないままなんです。
幸いにも読書感想文の方は国語の授業で(少しは!)文章を書く練習をしているでしょうけれども、じゃあ自由研究の練習は?
練習もせずに研究できると思います?
じゃあ、小学生では簡単な研究の練習をせずに、いったい現代日本の教育課程のどこで習うかというとこれが厄介なことに大学なんです。
研究にも考え方の方法というものがあり、これを、本気でやるなら大学の卒業論文以上。
さて、簡易とはいえ小学生の夏休みの自由『研究』。
全く何もわからない小学生が、ルールも考え方もわからないものを夏休みにやってらっしゃーいと先生から放り出される。
先生は研究の仕方は教えてくれていない。
とんでもない天才児以外は、親がサポートしないでいたら、そりゃ何も進みませんって。
ですから、小学生の自由研究にはある程度のサポートが必要です。
自由研究に小学生のうちは親はどう関わったらいい?
でも手伝い過ぎたらだめでしょ?というと、その通り。
関与なしは無理ですが、関与しすぎもダメ。
じゃあいったいどういうかかわり方をすればいいの?と悩まれると思います。
これに対しては、何をやるか、どんなことが疑問に思ったのか、そういった主体的なことはお子さんが考えるべきであり、それ以外のところでそっと手を差し伸べてあげる必要があるということです。
先ほども述べた通り、お子さんはたかだか自由研究とはいえ研究のやり方を全く知らない・練習させてもらえないまま夏休みの課題として自由研究に取り組まなければならない状態です。
このとき一番困るのは、研究の組み立て方の考えの基本を知らないことだと思います。
実は大学の研究も、小学生の自由研究も、突き詰めていくと同じ事をしています。
②どうやったらその疑問が解決できるのかやり方を考える
③どういう結果が出たのか
④その結果からどんなことが考えられるのか
という一連の考え方の流れです。
これを大学生の卒業論文風に言い換えると
②方法
③結果
④考察
です。(これに概要やら付録やら、参考文献なんかがついて小難しく見えますが基本は同じです)
大学生でようやくレポートや卒業論文などで、このような研究結果の書き方の手順を学ぶのが今の日本の教育です。
それを簡単なものとはいえ、小学生で何も教えてないのにやらせようとする・・・。
これでは、大学などで学んだり、企業に入ってから身に着けたり、自然とそういう論理思考ができる保護者が教えた子の自由研究が力作になるのは当たり前ですよね。
ですが、逆に言えばこの基本の考え方の手順さえ導いてあげられれば、どんな小学生の自由研究だってそれなりの形になるということです。
もしあなたのお子さんが理科や社会のテーマで自由研究をやろうと考えていたら、疑問に思ったことはお子さんの意見をそのままに、考える手順をそっと教えて導いてあげてください。
自由研究を親の作品にしないポイント
とまぁ簡単に手を差し伸べるといっても、やっぱりコツやポイントがあります。
前もって断っておくと、書いたりまとめたりするのは自分でやらなきゃ意味がないので、そういった作業的な部分はやりやすい環境(模造紙を広げて書けるとか実験しやすく台所を空けるとか)を整えてあげるだけで、親であるあなたが書いてしまうのは絶対にダメです。
私はもともと小学生のころから理科が大好きで、小学校高学年ぐらいにもなると相当手の込んだ自由研究を組み立てていました。
が、やっぱり両親に聞いたり、こっそり導かれたこともいくつかあったなと今更ながらに思うところがたくさんあります。
それに加えて、長年教育現場にいた人の話を交えて、夏休みの自由研究を親の仕事にせず、でも上手に子供を導いていくにはどこで手を差し伸べるべきかのポイントをまとめてみました。
②実験や調べ方のやり方を手助けする
③子供の中で自主的に疑問点が出てきたらそれを一緒に調べる、答えてあげる
④どっちに行ったらいいのか全然わからない状態になったら方向を指し示す
⑤聞かれた以上のことは教えない
①考え方の順序を教えてあげる
これは先ほどの実験の考え方の基礎の話です。
といっても、お子さんにしょっぱなから「まずきっかけを考えて、そのあと方法で・・・」といっても全く意味はありません。
お子さんが「家で飼ってる猫のことを調べたい!」というやる気を持ったとします。
そしたら
●猫のどんなことを知りたい?
というように、お子さんの疑問点を堀さげ、そして疑問点を明確にしていきます。
このときのやりとりはそのまま「きっかけ」になるので、文章で書き残しておくといいでしょう。
そして疑問点がはっきりとしたところで、その謎を解くためにはどういう風に調べたらいいのかを考えます。
もちろん本人がどうやって調べたらいいのかわかってる場合には全く問題ありません。
そうやって実験をしてみたら次の結果は自然とまとめられる子が多いです。
逆に、そのあとの「どうしてこういう結果になったの?」という点を考えるステップをやらない自由研究が意外と多いです。
というのも、きっかけ→方法→結果というところまでは自然な流れなのですが、そこからもうワンステップの「どうして?なぜ?」となる思考の過程は、やはり研究の作法を知っているか知らないかが大きいからです。
なのでもし、お子さんの自由研究が結果で止まってしまって満足しているのであれば、「じゃあどうしてこういう結果になったんだと思う?」という問いかけをして、一緒に考えてみるのがいいと思います。
②実験や調べ方のやり方を手助けする
これは研究の流れのうち、特に方法のところで詰まる場合です。
例えば「お家で飼っている猫ちゃんの一日の行動を観察する自由研究」をしよう!ということになったとします。
でもお子さんはそんなことしたら、一日中猫ちゃんに張り付いて撫でまわしておそらく観察になりませんよね。
その場合には例えば「猫が寝ている時間と場所を一週間毎日記録をつけてみたら?」とかやり方をアドバイスすることでサポートすることができます。
このとき、観察でも実験でも重要なのは2ポイント。
●観察、実験するものを一定の条件にすること
例えばですが「猫ちゃんの感情」なんてものを観察しようとしても、にゃんこは答えてくれませんから、記録として残すことはできません。
しかし「うれしい時には尻尾をあげる」という事実を知っていたら、尻尾が「上がっている/上がっていない」という「ある/なし」で記録をつけていくことができます。
また同じく猫ちゃんの観察の場合に、普通に食べているときと誰かに見張られたり触られたりしながら食べているのでは条件が違うので、違う反応が見られてしまう可能性があります。
こういったことに気を付けて実験や観察をしようとする小学生はいません、いたら超天才です(((
だからこの実験の基礎を知っている親御さんにサポートを受けた子の自由研究は「なんだかすごい整ってる・・・」と感じてしまうのです。
③子供の中で自主的に疑問点が出てきたらそれを一緒に調べる、答えてあげる
きっかけになるような出来事や、あるいは実験をしている最中、あるいは結果を見たとき。
いつになるかはわかりませんが、自然とお子さんのなかで「どうして?なんで?」と思うことが出てくる場面がきっとあります。
でも小学生の教科書には載っていないようなことも当然あるわけです。
そのような場合にはその疑問の答えを調べる方法や、あるいは答えになるようなヒントを出すというのは大いにありです。
図書館にいったり、博物館に行ったり、本やインターネットで調べてみたり。
方法はいろいろありますが、研究で一番重要なのは「なぜ?どうして?」という気づきです。
これが出てきたら「この謎をちゃんと書けたら、うちの子の自由研究面白くなるかも!」と思って間違いありません。
④どっちに行ったらいいのか全然わからない状態になったら方向を指し示す
小学生ですから、いろいろ考えているうちに次にどうしたらいいのか全く分からなくなってしまうこともあります。
これは全体像を把握していないから起こることなので、誰でもありうることです。
大人や大学生なら自分で次の課題を探して取り組むところですが、そうにもいかないので、やっぱり親御さんが手を差し伸べてあげるシーンだと思います。
何をしたらいいのか全く分からなくなってしまった場合には、フリーズしていたり放り出したり、見当違いなことをやり始めたりと、反応は様々です。
ですが一貫して言えるのは、本来の道筋とは違うところを目指しそうになっているということ。
もしこの状態に陥っているのを見つけたら、まずはお子さんが今研究のどのステップで躓いているのかを見てあげてください。
そして次のステップは何なのか?一緒に理論的な思考に従って考えてみてください。
⑤聞かれた以上のことは教えない
「そうよね、小学生が小学生らしくない答えを出すのはよくない!」と勘違いされるかもしれませんが、そういう意味ではありません。
これは、あなたが答えを知っていて先回りをして回答を教えてしまうことがダメ、という意味です。
実際、私は小学校6年生の時点では習わない光合成のことについて、日ごろの両親との会話の中で知っていたので自由研究の題材にしました。(植物が光を栄養源にしているという漠然とした情報でしたが)
つまり、その子にとって知っている・想像できる・考えられる範囲のことであれば別に小学生の教科書の範囲より難しいことでも全然構わないのです。
逆に「氷が溶ける温度は何度?」というのの答えをあなたが知っていて、お子さんがそれを実験で確かめようとしているのに先回りをして「0度で溶けるはずよ」と教えてしまうのがNG!というわけなのです。
小学校の先生や親が知らなくても、その子にとって知っていること、技術、考え、なんてものは意外と多いものです。
下手したら小学校の先生よりも昆虫の種類が言える子もいますよね?
「おばあちゃんちの近くで鳴いているのが家の近くのセミと鳴き方が違うからセミの種類を調べる!」と言ってヒメハルゼミを捕まえて名前も調べて写真をとったとして、「これは親がやったんでしょ」と言われるでしょうか?
教科書に載ってないセミは小学生は知っちゃダメ?小学校の先生が知らないセミを知ってたらおかしい?
そんなことじゃなく「すごい!セミ博士じゃん!!」ってなりますよ、たぶん。
確かにそのセミを取りに行くために親御さんの協力は必要かもしれませんが、それを取って調べて写真をとるのはお子さん自身の力でやれば全然問題ないのです。
なので、お子さんが自分の力で考えて調べたりして疑問に思ったことを聞いてきたら、あなたが疑問に対してだけ答えるのは何ら問題がありません。
しかし大人のあなたが答えを知っていたり、応用的なことを知っていたりして、それを先回りして答えてしまうのがダメというわけなのです。
小学生の夏休みの自由研究で親の関与はどうすればいいのかまとめ
●主に親がサポートするべきなのは、研究というものの流れや考える順序
●自由研究を親の仕事にしないためには、5つの関与のポイントを押さえて、お子さんが困った状態の時だけサポートするようにする
●書いたり、実際に何かやる場面はすべて本人にやらせる(危険な行為がないように見守る必要はあり)
今は小学生の自由研究がネットで売り買いされているともいわれており、理系の人間からすると「なんてもったいないんだろう・・・」と思ってしまいます。
自由な発想で調べたいことを調べていいなんて、ものすごく素晴らしいことです。
だって中学校や高校に入ったら課題の方が多くて自分の調べたいことなんか後回しなんですから。
だからこそ、ちょっと面倒かもしれませんがお子さんの「なぜ?どうして?」という気持ちを素直にそのまま自由研究にしてあげてほしいなと切に願います。
小学生のうちから研究的な考え方の基本を身に着けたら、あなたのお子さんが将来ノーベル賞を取る可能性だってあるんじゃないかと思います。
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